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名演2018年1月例会 文学座公演

女の一生

作:森本 薫
補訂・演出:戌井市郎による 
演出補:鵜山 仁

誰が選んでくれたのでもない 自分で選んで歩き出した道ですもの
日本演劇史に残る名作が、いま新たな演出と新たな布引けいでよみがえります!

1月23日(火)6時30分
   24日(水)1時30分
       6時30分 
日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(名古屋市民会館中ホール)
地図

上演時間2時間45分
(途中休憩15分を含む)

女の一生表 女の一生裏
あらすじ・みどころ
『女の一生』と女性たちが生きた時代
キャスト・スタッフ
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会費 月額一般 2700円 29歳以下 2000円  
   高校生以下 1300円
入会金  一般  3000円 29歳以下 2300円    
高校生以下 1600円
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 布引けい役山本郁子明治38年(1905)、日本がようやく近代的な資本主義国となり始めた頃、天涯孤独の境涯にあった布引けいは、不思議な縁から拾われて堤家の人となった。清国との貿易で一家を成した堤家はその当主もすでになく、息子たちはまだ若く、妻のしずが義弟・章介とともに困難な時代を生きていた。やがてけいは、その闊達な気性を見込まれ、長男伸太郎の妻となる。次男・栄二に寄せた思慕は断ち切られ、けいは正真正銘、堤家の人となる。そして、しずに代わる家の柱として、担いきれぬほどの重みに耐えながら、その「女の一生」を生きていくのであった……。

 森本薫作『女の一生』は、名優と呼ばれた故杉村春子の代表作として知られる舞台でです。
 1945年4月に久保田万太郎演出で初演され、その後は戌井市郎の演出作品として再演を重ね、杉村主演の<布引けい>役の上演 回数は947回におよびました。  
 2014年に鵜山仁が戌井演出を下敷きとした新演出で新たな命を吹き込むと、「現代を描いた作品」「人間関係が際立っている」「森本戯曲の台詞の美しさを再認識した」など 絶賛の声が寄せられました。  
 2016年山本郁子が布引けい役を演じ高い評価を得ました。  
 派手さを抑えた演技は周りの人物たちと見事に融合し、この作品そのものの世界がより一層の深み を持って客席へ迫ったといえるでしょう。


    1月例会『女の一生』と女性たちが生きた時代

    はじめに 
     この物語の始まりは日露戦争のあった1905(明治38)年、終りは第2次大戦終戦の1945(昭和20)年10月です。この物語は、日本の近代史と深くつながっています。舞台の進行と合わせて、この間に起きた歴史的な事案、背景をみながら、日本にとってどんな時代だったのでしょうか。
     
     布引けいの嫁いだ堤家は、清国との貿易で一家をなしました。日清戦争(1894・明治27 年)後、日本は空前の好景気が訪れ、企業の勃興も相次ぎ、それに伴い、賃金労働者の数も急増し、その多くは女子労働者でした。低い賃金、劣悪で過酷な長時間労働を強いられました。昼夜2交代の12時間労働で、16 〜 17 時間の労働もまれではなかったといわれます。
     1905(明治38)年、約110 万の兵力を動員し、死傷者20 万を超す大きな損害を出しながら、ようやく日露戦争に勝利を収めました。
     『女の一生』の布引けいが舞台に登場するのは、その1905 年の正月でした。堤家の庭の裏の木戸からけいは、みすぼらしい身なりで入ってきます。子供の頃、母親に先立たれ、父親は戦死、帰る家もない孤児でこの時16 歳でした。(第一幕二場
     
     日露戦争後には、労働争議や社会主義運動に対する取り締まりも一段と激しくなり、1910(明治43 年)には「大逆事件」が起こりました。政府はこの事件をきっかけに、警視庁内に特別高等課(特高)を設置し、社会主義者の活動は一時途絶えます。 
     1909(明治42)年伊藤博文がハルピンで暗殺され、その年、けいは堤しずから、長男の伸太郎の嫁になり、この家の仕事を任せたい、といわれます(第二幕)。

     中国では、1911(明治44)年、満州民族の清朝を倒して漢民族による中華民国が建国され(「辛亥革命」)、ロシアでも、1917( 大正6) 年レーニンらを指導者とする世界最初の社会主義政権が誕生(「ロシア革命」)しました。日本は、英米仏などとともに、シベリアに軍隊を派遣、1922(大正11)年まで駐留しました。

    堤家に現れて10 年、伸太郎との深い溝、第一次世界大戦から関東大震災

     日本国内では、女性の間にも自分たちを従属的地位に縛りつける社会的絆から解放し、地位の向上をはかろうとする思想・運動を生み出しました。1911(明治44)年には、平塚らいてう、らを中心とする青鞜社が作られ、「新しい女たち」と呼ばれて大きな反響を持って迎えられました。
     『女の一生』の舞台(第三幕)は1915(大正4)年。けいが堤家の庭に現れてから10 年。けいは伸太郎と結婚し、娘知栄をもうけました。しずは既に亡く、伸太郎の弟栄二は家を飛び出して中国大陸に渡っていませんでした。日本の中国大陸への介入は、堤家の商売にも影響し、難しい局面にありました。伸太郎は家業への意欲をみせず、けいは女主人として、堤家を一身に背負い、店のことから奉公人の指図まで、家事よりも商売にはげむ生活を強いられていました。
     伸太郎は、けいに「お前は堤家の重要人物となることの期待のために、お前自身の心さえ偽ったことがありゃしないかい」といってしまいます。伸太郎が去った後、伯父の章介が「人間というやつは実によく間違いをする。まるで間違いをするために何かするみたいだ。ところで(けいに)あんたもその間違い組かね」といいます。
     けいは( ぐっと首を上げて)「いいえ、そんなことはありません。誰が選んでくれたのでもない、自分で選んで歩きだした道ですもの。間違いと知ったら自分で間違いでないようにしなくちゃ」といって第三幕は閉じます。

    背景となる歴史上の主な事案

    1903年(明治36年)平民社設立(1905弾圧解散)
    1904年(明治37年) 日露戦争。第1次ロシア革命。
        与謝野晶子 「君死にたまふことなかれ」
    1905年(明治38年) ポーツマス条約
    1906年(明治39年) 南満州鉄道株式会社が成立
        日本社会党結成(片山潜・堺利彦ら1年で禁止)
        杉村春子(本名 中野春子)広島で生まれる。
    1909年(明治42年)小山内薫・左団次自由劇場設立
    1910年(明治43年) 日韓併合条約
              大逆事件 幸徳秋水ら12名死刑      1911年(明治44年) 中国辛亥革命(孫文) 
        女性解放宣言…平塚らいてう「青鞜」発行
    1913年(大正2年)島村抱月・松井須磨子芸術座。
    1914年(大正3年)第1次世界大戦参戦。
    1917年(大正6年)ロシア革命
    1918年(大正7年)シベリア出兵。米騒動。
    1919年(大正8年)朝鮮3.1独立運動。
    1920年(大正9年)最初のメーデー開催
    1922年(大正11年)日本共産党、全国水平社結成
    1923年(大正12年)関東大震災、朝鮮人虐殺。
        大杉栄・伊藤野枝、甘粕大尉に殺される。
    1924年(大正13年)築地小劇場完成
    1925年(大正14年)治安維持法公布
        普通選挙法公布(25歳以上の男子に選挙権)
    1927年(昭和2年)山東出兵。金融恐慌起こる。
        杉村春子、二度目の上京、築地小劇場に入る。
    1928年(昭和3年)最初の普通選挙実施。3・15事件。
              張作霖爆殺。パリ不戦条約。
    1929年(昭和4年)山本宣治暗殺。世界恐慌始まる。
    1931年(昭和6年)満州事変起こる。前進座結成。
        翌32年上海事変。満州国建国。5・15事件。
    1933年(昭和8年)国際連盟脱退。
    1934年 (昭和9年)満州国・溥儀皇帝になる。
    1936年(昭和11年)2・26事件起こる。日独防共協定。
    1937年(昭和12年)日中戦争起こる(盧溝橋事件)。
        12月南京事件起こる。10月、文学座設立総会。
    1938年(昭和13年)国家総動員令公布。
    1939年(昭和14年)朝鮮で創氏改名・皇民化政策。
        第2次世界大戦勃発。
    1940年(昭和15年)大政翼賛会・大日本産業報国会成立。
    1941年(昭和16年)東条英機内閣成立。太平洋戦争。
    1945年(昭和20年)4月「女の一生」初演。
        8月原子爆弾投下。ポツダム宣言。敗戦。




     1914(大正3)年6月、第一次世界大戦がはじまり、ドイツ帝政が倒れた1918 年に終りました。パリ講和会議で、日本が中国・山東省の旧ドイツ権益を継承しましたが、中国では激しい反対運動がおこり、1919(大正8)年、日本商品の排斥が全国的に広まっていきました(「五・四運動」)。朝鮮でも日本の植民地支配に反対し、独立運動はたちまち朝鮮各地に広まっていきました。
     1923(大正12)年9 月1 日、関東一帯を見舞った大震災(「関東大震災」)によって、死者・行方不明者は約14 万人、被災者は340 万人以上に達しました震災の大混乱の中で流言飛語が乱れ飛び、朝鮮人と思われる人々が次々と捕えられ殺害されました。

    普通選挙法と大衆文化の高揚、太平洋戦争と敗戦へ、そして堤家では

     1925(大正14)年、政府は、普通選挙法とともに治安維持法を成立させ、言論・思想の自由に対する弾圧を続けました。明治末期から盛んになってきた新劇では、松井須磨子島村抱月らに続いて、1924(大正13)年には、小山内薫土方与志と協力して築地小劇場を創立、新劇をほぼ確立したといわれています。
     『女の一生』の第四幕の始まる1928(昭和3)年の前、関東大震災のあと、日本経済は大きな打撃を受け、金融恐慌の発端となりました。中国では、「五・四運動」のあと、蒋介石は南京に国民政府をつくりました。日本は、日本人居留民の保護を理由に1927 〜 28 年に3 次にわたる山東出兵を行いました。
     これらの動きは第四幕の中でも出てきます。中国事情は複雑をきわめ、堤家の事業も、特に山東出兵後、次第に困難になってきていました。けいは堤の家と事業をかたくなに守ろうと努力をしますが、そうすればするほど、周囲の者はけいをさけるようになっていきます。夫・伸太郎は家を捨てて、自由な独り住まい。けいは、歳月と共に変ってきた自分がだんだん嫌になってゆくのを感じないわけにはいきませんでした。久しぶりに中国から帰った栄二はこの家の変わりように戸惑います。この栄二の素性も明らかになっていきます。

     このあとの日本は、軍部の台頭でひたすら戦争の道をすすんでいきます。そして敗戦を迎えます。戦禍に荒れ果てた東京の街、堤家の焼跡で、けいは栄二に静かに語りかけます…。 
     
     『女の一生』の初演は1945(昭和20)年の4 月、大空襲、機銃掃射が続く中、初演を迎えました。以来70 年以上にわたって公演されてきました。この物語は、女性たちの心の中に生き続けてきたと思います。
     2016 年から布引けいの役を山本郁子にかわりました。派手さを抑えた山本郁子の演技は、周りの人物たちと見事に融合し、この作品そのものの世界が一層の深みをもって客席に迫った舞台になっています。
     あらたな『女の一生』の始まりです。  


キャスト

布引けい 山本 郁子
堤しず 赤司まり子
伸太郎 大滝  寛
栄二 上川路啓志
総子 前東美菜子
ふみ 松山 愛佳
章介 石川  武
知栄 中原三桜里
野村精三・刑事1 鈴木 弘秋
職人井上・刑事2 今村 俊一
女中 清 松本 祐華
知栄の少女時代 上野 璃子

スタッフ

森本   薫
補訂・演出 戌井市郎による
演出補 鵜山   仁
装 置 中嶋 正留
照 明 古川 幸夫
音響効果 秦   大介
衣 裳 中村 洋一
舞台監督 黒木   仁
演出助手 稲葉 賀恵
制 作 白田  聡


関連サイト

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最終更新日 2017/12/20